危機の時代における日本の対外政策
―戦略的自立への道―
はじめに:戦略的自立の時代
第二次大戦以降、曲がりなりにも国際社会の安定と成長を支えてきた国際秩序が、いまや疑いようもなく、崩れ始めている。それは、あからさまな侵略行為を独自のナラティブで正当化しようとするロシアや、国際秩序の恩恵をうけて発展を遂げながらその行く末に自国の覇権を展望する中国だけではない。戦後秩序の形成を主導してきた米国自身が、みずから形成し発展させてきた国際秩序を破壊する側に回っている。[1]
人類史において国際秩序は常に力の強い者によって形成され、同じく力の強い者によって破壊、そしてまた新たな秩序が生み出されてきた。しかしながら、秩序は決して力のみによって維持されてきた訳ではない。多くの国々がそれを受け容れる価値観、ソフトパワーがあって初めて持続性をもつものであった。戦後80年以上に亘って維持されてきた今日の国際秩序には、それを背後で支えるソフトパワーがあり、その最大の担い手が米国であった。その米国が、今や国際秩序の破壊者の側に立ち、さらに急速にソフトパワーを失いつつある。
その意味で、我々は真に歴史の転換点とも言うべき時代に生きているのであり、よってそれに相応しい国家戦略をもたなければならない。そのような国家戦略の中核をなすのが「戦略的自立」の発想である。以下、戦略的自立とは何なのか、なぜ今戦略的自立なのか、そしてわが国にとっての戦略的自立とはどのような政策なのかについて、その対外的側面を中心に明らかにしたい。[2]
Ⅰ 戦略的自立とは何か
「戦略的自立」の「自立」とは、大国の支配が強まる国際関係の中で大国への依存をできる限り克服し、自国の国益と価値観に立脚して国家意思を決定し行動することであり、「戦略的」とは、それが国家の大方針なのであって、全ての「戦術的」対応までが同じ方向を向いていることを意味しないということである。
国際社会と積極的に関わり、好ましい国際環境を能動的に推進しようとする意味において、「孤立主義」とは異なる。外交面の自主的判断のみならず、それを支える政治・経済・軍事的諸条件の再構築を含むという意味において、単なる「独自外交」とも異なる。
歴史的に、第二次大戦後最初に「戦略的自立」を唱えたのはフランスであった。米ソ冷戦下でNATOに加盟しながら、独自の核開発を進めるとともにNATOの軍事機構からは脱退して、国家存亡にかかわる最終的な意思決定は自国で行うという立場をとった。インドも2000年代以降、非同盟主義に代わる政策として戦略的自立を主張し始めた。大国間の敵対関係から距離を置くことで国益を守ろうとする非同盟主義の考え方に対し、大国を含む多くの国との関係を深めつつ、同時に国益をかけた国家意思の決定は他国の影響を受けないとの立場をとったのである。[3][4]
最近ではEUもその共通外交安保政策の核心的概念の一つとして戦略的自立に言及しており、敢えて「戦略的自立」と称せずとも、いまや多くの国がそれぞれの直面する環境の変化の中で、同様の発想をもって外交政策を推進しようとしているのが実情である。[5]
Ⅱ 今なぜ戦略的自立なのか
1 国際関係の構造的変化
冒頭に述べたような国際環境の中で、今後の国際社会は協調よりは競争、安定よりは不透明感が支配的になるであろう。対話と説得による時間をかけた問題解決よりは、力による迅速な解決への志向性が高まるだろう。「法の支配」は規範意識として存続はしても、そこに立脚した問題解決への志向性は弱まるだろう。多国間主義は消滅しないが、国際社会が直面する課題の解決の場としての役割は低下し、地域別、分野別、同志国間、あるいは地政学的利益を共有する少数の国々による協力と連携(ミニラテラルな協力)や二国間主義、さらには単独行動の比重が増すだろう。
本年2月末の米・イスラエルによるイラン攻撃とその後の状況は、今日の国際環境が以上のような変化の中にあることを如実に物語っている。今回の攻撃を機に、イラン及びその周辺を超えて、混乱と不安定がさらに拡大する可能性も視野にいれておく必要があるだろう。
民主主義や人権、法の支配などの普遍的価値への志向性がなくなることはないが、個々の国や民族に固有の伝統的価値観が一層重視され、後者が実際には前者の内実を構成する傾向が増大するだろう。
米国は引き続き世界で最も強力な国家であるが、グローバルな秩序形成については意思と能力ともに減退する。一方で中小国家群の影響力が相対的に増大するが、グローバルな秩序形成を主導する力はなお不十分な状態が続く。
経済に目を向ければ、WTO(世界貿易機関)の機能強化やCPTPP(環太平洋パートナーシップ協定)を拡大するなど、国際的な自由貿易体制を維持するための努力は今後も続けられるが、同時に保護主義や管理貿易の比重が増すだろう。
また、経済力を政治力へと転化する志向性が一層高まり、政治目的を達成するために、経済的依存関係の「武器化」に向けた動きが強まるだろう。そのような中で、多くの国が枢要な技術やサプライ・チェーンの自国による管理を重視し、経済的依存性を利用した政治的威圧への抵抗力をつけようとするだろう。[6]
以上のような動きが将来、グローバルな秩序形成につながるのか否か、現時点で見通すことはできない。
2 米国の変化
国際秩序の崩壊プロセスにおいて、今日最も重要な役割を果たしている大国の一つが米国であり、かつその多く、少なくとも「米国第一主義」の基本に関わる部分は、トランプ政権以降も持続性をもつであろう。
米国の最も深刻な変化の第一は、米国が、戦後自ら主導して作り上げてきた国際秩序が、いまや米国の国益を侵害する存在になったとの認識をもつに至ったことである。
戦後米国はその強大な力を背景に国家の行動を律するルールを形成し、そのルールで自らも縛り、そのうえで国際秩序を維持するコストをも進んで負担してきた。
しかしこのシステムは、当初から米国に余りに多くを依存するという脆弱性、即ち、米国が利益を見出す限り維持されるが、そうでなくなった時には責任を放棄するというリスクを抱えていた。これこそがいま世界が直面している現実であり、いまや米国は、自らが国際秩序の維持強化に貢献するよりも、世界が米国に何を提供するかの確認を対外政策の優先事項とするに至った。
以上に関連して第二に、米国の同盟に対する考え方に大きな変化が生じている。米国を中心とする同盟関係は、同盟国のみならず、戦後の国際秩序を支える役割も果たしてきた。いまや米国は、同盟の第一義的価値を国際秩序の維持よりも、米国の利益にどれほど裨益するかによって判断するとの発想に立っている。
トランプにとって同盟は、本来同盟国が自国で負担すべき国防の責任を米国に負わせる装置であり、場合によっては同盟国は米国の富を奪う「略奪者」となる。のみならず同盟国は、米国に対しこれまでの「負債」を「返済」する責任を果たすことまで求められる。
経済の分野においても、「米国を利用して豊かになった同盟国」は今や米国の経済再生(米国の製造業復活のための大規模な投資)に協力するのが当然、というのがトランプの姿勢だ。
その対象は軍事だけでなく、21世紀の国際政治の行方を左右するといわれる最先端技術(AIや量子コンピューター、先端半導体など)の開発と世界標準作りや希少鉱物資源のサプライ・チェーン、米国の製造業や軍需産業の復活など広範囲に及ぶ。
第三に、もはや米国は自由貿易に執着していない。自由貿易は、戦後米国の対外関係の核心であったが、トランプ政権はその維持について殆ど考慮する様子がない。トランプは、米国が主導してきた国際自由貿易体制の下で世界は開かれた米国市場に「不当に」参入し、米国の製造業を衰退させ、労働者を困窮させたと主張している。トランプは、いまや世界が米国に「借りを返す番」であると考えている。
第四に、国際的課題に対する関与が選択的になっている。いまや米国は国益を狭く定義するようになっており、国際的課題への米国の取組みはますます選択的になるだろう。トランプによれば、「米国の利益に直接関係のない地球の裏側の問題」にまで関与してきたことが、米国を疲弊させたということになる。
3 戦略的自立に向けて
以上のような国際環境の変化の中で、多くの国は、これまでの国際秩序を支えてきた国家関係や枠組を前提とした対外政策の延長線上に、自国の平和と繁栄を思い描くことができなくなっている。
そのような中で彼らは、国際秩序の動揺はリスクであると同時に、新たな秩序に自らの声を反映させる機会でもあるととらえ、不確実で不透明な世界を生き抜こうとしている。そのような国々が、程度の差こそあれ、等しく推進しているのが、「戦略的自立」の政策である。
彼らは「大国政治」に対する期待感を低下させ、多角的な国家関係の構築に努め、好ましい環境を自らのイニシアチブにより能動的に整備しようとしている。
彼らはまた、「自助」の意識を強くもち、例えばインドの「自立したインド(Atmanirbhar Bharat)」政策のように、「自助」を中心に据えた開発戦略を策定しつつある。さらに、「自助」の延長とも言えるが、枢要な技術やサプライ・チェーンの管理強化をも進めている。各国が近年進める「経済安保」政策は、自由貿易主義に対する信頼性の低下という状況の中で、かつて経済の合理性に反するとして批判された、国家管理による産業政策である。[7]
Ⅲ わが国にとっての戦略的自立とは
わが国は、安定的な国際秩序とルールに基づく国家関係を最も必要とする国の一つである。国際秩序が崩壊のプロセスにあり、しかもそれがわが国にとって最も重要な二国関係を構成する米国自身によってもたらされ、さらにこの動きがなお相当の期間続くであろうと想定される中にあって、わが国も、他の多くの国と同様、戦略的自立への道に向かうことを国家戦略の基本に据えることが求められている。
それはわが国自身の国益と価値観に基づく主体的意思決定を中核に据える国策であり、外交面の自主的判断を支える政治・経済・軍事的諸条件を再構築すること、そして広範囲にわたる関与と連携のネットワークによる多角的な連携(multi-alignment)を構築することで、外交の選択肢を増やすことだ。そしてそのうえで、自らアジェンダを設定し、国際的な発言力と交渉力を強めることである。
戦略的自立は、それぞれの国の歴史や国際環境に応じて一律ではない。わが国のそれはフランスやインドその他の国とは異なる、わが国自身の戦略的自立である。
以下、これを①対米関係、②中国、ロシア、欧州、③インド太平洋の中堅国、④グローバルサウス、それぞれとの関係において、どのように発揮すべきかを具体的に見ていきたい。
1 対米関係における戦略的自立
(1)わが国自身による防衛努力
わが国にとっての戦略的自立とは、米国から離れることではない。むしろ、日米関係の強化のためにこそ、戦略的自立が必要なのである。誰も一方的に頼ってくる隣人と、国家と国民の安全と繁栄に関わる戦略的課題について協力しようとは思わない。その課題の解決を、わが国自身がイニシアチブをとって行うことが不可欠である。
今日、対米関係はわが国にとって最も重要な二国間関係であり、好むと好まざるを問わず、この地域でわが国が平和と繁栄を図るには、米国との関係を強化する以外の選択肢はない。また、米国の関与がインド太平洋地域の平和と繁栄にとって不可欠であることも厳然たる事実である。戦略的自立の核心は国益であり、米国をこの地域につなぎ留めておくことはわが国と地域全体にとっての国益である。
他方で既述のとおり、今日米国は「米国第一主義」を掲げ、同盟関係についても従来のような寛容さを失っている。日米同盟関係の強固さの程度は常に同じではない。今日の日米同盟は米国の厳しい対中認識との関係で基本的に強化の方向にあると言えるが、これを未来永劫に亘って当然視することはできない。米国の国内事情、また米中関係、あるいは米中ロ関係その他の戦略的な国際環境如何によって変化する可能性を常にはらんでいる。
わが国としては、強固な日米同盟の維持・発展のために不断の努力を続けながら、同時に同盟関係の変化にも対応できる強靭さを作り出していくことが不可欠である。そのためにわが国がなすべきことは、何よりもまず、わが国の防衛はわが国自身が第一義的に担うという覚悟とそのための具体的行動であり、共通の課題の解決に向けた努力を、わが国自身がイニシアチブをとって行うことである。
その結果として、わが国の対外政策全体の中で、米国との関係がよりバランスのとれたものとなるだろう。
(2)わが国の「戦略的不可欠性」
同時に今日、重要なことは、米国自身がわが国との協力関係を強化し、侵略から守ることを政策上の優先順位とせざるを得なくなる状況を作り出すこと、換言すれば、米国にとってのわが国の「戦略的不可欠性」を高めることである。ここに言う「戦略的不可欠性」の分野には、以下が含まれる。
第一は、先端技術の分野における不可欠性。わが国はすでに半導体の「製造装置」とシリコンウエハーを始めとする「基幹材料」というサプライチェーンの川上分野で圧倒的な競争力を有し、米国(及び世界)の半導体製造にとって不可欠の存在となっている。半導体に加え、精密誘導兵器の基礎となる電子部品、通信技術や、航空機製造の材料の一つである素材・セラミック技術なども日本が「戦略的不可欠性」を有している。これらは米国との兵器の共同開発の核心ともなる分野であり、米国が対中優位性を維持する上でも不可欠の技術である。わが国はこのような不可欠性を断固として守り、米国との関係で、これら日本の技術なくしては産業の発展や武器製造が叶わない状況を構築・維持していかなければならない。[8]
第二に、ロジスティクスや後方支援における不可欠性。わが国にとって、中国、ロシア、北朝鮮といった国々に地理的に近接していることはリスクであるが、他方で、米国による軍事行動との関係では不可欠の存在となる。在日米軍基地は、軍事オペレーションにおける出撃拠点であるのみならず、弾薬の備蓄、武器の整備、補給や修理にとっても不可欠の存在である。
第三に、情報分野における不可欠性。同様に、地理的に近く、文化的親和性もある周辺諸国との関係における情報・分析は米国にとって重要な意味をもっている。地理的な近接性があるからこそ得られる電波情報や相手国軍の行動把握等、また文化的親和性があるからこそ得られる行動原理の分析等、わが国の「戦略的不可欠性」分野は決して少なくない。ただしこの分野においてわが国はなおその能力を十分に発揮できておらず、「戦略的自立」という観点からも、情報収集・分析の国家体制を早急に整備する必要がある。
第四に、この地域における地域協力のネットワークのハブ的存在となることである。この地域の平和と安定は台湾、インド、ASEAN、豪州など地域諸国との協力関係のネットワークなくして維持・増進することはできない。そしてわが国は、このネットワークづくりにおいて不可欠の役割を果たすことができる。わが国が長年積み重ねてきた開発援助やインフラ投資などを通じて形成されてきた信頼関係は、米国に対し比較優位のある分野である。この地域のネットワークづくりについて、米国は日本に頼らざるを得ないという状況を作り出していくことが重要である。
(3)核兵器の問題
対米関係における戦略的自立との関連で、核兵器の問題に触れておきたい。インドにせよ、フランスにせよ、いずれも核兵器を保有した上で、戦略的自立を標榜している。欧州NATO諸国には、米国の拡大抑止に対する信頼性の低下を懸念して、核保有の可能性を議論する国が出始めている。ではわが国はどうか。わが国の戦略的自立は、将来における核保有の可能性を含むべきか。
結論から言えば、わが国としては核を必要としない形での最大限自主的な安全保障を目指すのが現実的なオプションであろう。
わが国が直面する現実は、実際問題として核開発を目指すことはほぼ不可能ということにある。わが国による核保有はほぼ間違いなく、周辺諸国の核保有ないし一層の増強を誘発するであろう。また、核爆弾の設計から実験、保有、管理、さらに運搬手段の開発に至るまでの長い期間、日本の国際的孤立は免れず、場合によってはかつてシリアの核施設がイスラエルの攻撃を受けたように、日本の関連施設も攻撃を受ける可能性さえある。そもそも米国自身が、日本の核保有に向けた動きを断固として阻止しようとする可能性がある。[9]
日本が提唱した国連安保理改革に激しく反対した中国は日本の実質的大国化にどう出るであろうか。北朝鮮の核武装を黙認した中国は極東にもう一つの核保有国の誕生を黙認するであろうか。
日本による核保有論は、国民感情の克服に加え、このような多大なコストを払ってもなおかつ十分に見合うものであることが証明されなければならない。それができないのであればわが国としてはむしろ、米国による拡大抑止(核の傘)の信頼性を高めるための環境整備を不断に行いつつ、「核によらない安全保障」、すなわち先端技術を実装した通常戦力による反撃能力の確保、衛星通信の妨害、サイバー、電磁波能力の向上、さらには情報戦・認知戦対応など、敵の核・通常戦力に対する総合的な防衛態勢の構築を目指すことが、現時点では合理的である。
NATO型の核シェアリングも、理論的には一つのオプションであろうが、この問題が招きうる国内的反発を考えれば、当面は日本の選択肢の一つとなり得ないと思われる。
2 対中関係における戦略的自立
中国は何千年もの昔から、そして未来永劫に亘って、わが国の隣国である事実は変わらない。協力し合うことの利益が警戒と対立によって得られるものより大きいことは火を見るよりも明らかである。それと同時に、中国は長期戦略をもってこの地域の覇権を握ろうとしていること、また近くは可能となれば台湾を併合する方針であることもまた、念頭におかなければならない。よって中国との関係では特に「抑止」と「対話」のバランスが重要であるが、この双方を日本自身が設計し直すことこそ、対中戦略の中核となるべき「戦略的自立」である。
その関連で、地域の覇権を握ることを長期戦略として確立している中国にとって、その方針に変化をもたらすものは「力」しかない。よって米国との関係における部分で指摘したと同様、対中抑止においても何よりも重要なのは、まず日本の防衛は第一義的に日本自身が行うとの覚悟をもつことである。この一環として、わが国は核抑止を米国に委ねつつも、少なくとも通常戦力においては自力で守る能力を段階的に強化し、「抑止」の自立性を高める必要がある。
また、中国は、当初は軽微な威嚇行為から入って、徐々に威嚇のレベルを上げていき、長期戦略で徐々に自身の領土的野心を達成するやり方をとる。当初「軽微」に見える威嚇行為に対しても決して軽視せず、一つ一つに対し毅然とした対応をとっていくことが重要である。
また、かつて日中関係を安定化させると期待された貿易や投資における緊密な関係は今日、中国によって対日威圧の手段へと転化されている。「経済相互依存の武器化」への対応が急務であり、対抗措置としてのわが国の経済的不可欠性を、政策的に構築していく必要がある。
そのうえで、米国との協力がある。わが国にとって最悪のシナリオのひとつは、米国が、中国との合意を優先して、わが国を含む同盟関係を中国との「取引」を有利に進めるための手段に使おうとする可能性である。先に述べた、米国にとってのわが国の「戦略的不可欠性」は、まさにこのような事態の発生を防ぐために必要である。
さらに、伝統的な二国間同盟に加えて日米両国を含むミニラテラルな連携、すなわち日米豪、日米韓、日米印、Quad(日米豪印四か国の安保協力の枠組み)、Squad(日米豪比による比の能力強化協力)といった、パートナーシップの構築と育成が、この地域における米国の持続的関与を促す上で極めて重要である。また既述のとおり、日本はそのハブにならなければならない。[10][11]
このような協力関係の構築は、中国政府による自国企業への補助金の問題、レア・アースの輸出規制などを含め、中国の不公正な貿易慣行の是正をASEAN関連の制度やAPEC、G20などで提起する上でも有用である。
またこれに加え、地域全体における力の均衡という観点から、米国を含まない、日本=インド=インドネシアや日本=ベトナム=インドなどのミニラテラルな政治、安保、経済協力関係の推進もわが国の戦略的自立にとり重要な意味をもつものである。
3 対露関係における戦略的自立
対中関係においてもそうであるが、ロシアとの関係においても、外交政策的に最も重要なのは、わが国を対米関係の従属変数であると見做させないことである。残念ながら、戦後の長きにわたって、ロシアはわが国との関係をそのような観点で見てきた。領土問題にせよ、重要な経済関係のあり方にせよ、わが国との関係を独立したものと見ることをしなければ、真の交渉は成立しない。そのためにも、既述のとおりの、対米関係におけるわが国の戦略的自立が重要になる。また、戦略的自立の努力なしに、近々に日露間で領土問題に進展がありうるとの根拠のない期待を持たないことが重要である。
さらに、米中ロ三カ国との関係を視野にいれた対露戦略においても、戦略的自立の発想が重要である。この関連では、中露いずれかとの関係を強化して他方を牽制するという、いわゆる「逆キッシンジャー」戦略の有用性が説かれることがあるが、これは機能しない。
1970年代に米国のキッシンジャー大統領補佐官の戦略が奏功したのは、中ソ間の対立と良好な米欧関係という二つの条件が揃っていたことが大きいが、今はいずれの条件も成立しない。ただそれ以上に、中露のいずれかを味方につけて他方に対する抑止とするという発想そのものが、わが国にとっては実現可能性に乏しい。わが国としては米国とともに、中国とロシアの双方と向き合う外交戦略でなければならず、米国をこの方向に導くことがわが国にとっての戦略的自立でもある。
なおウクライナ問題との関係でみられるように、トランプはプーチン・ロシアに対する宥和的姿勢が顕著である。しかしながら、これは多分にトランプ個人の問題に起因する要素が大きく、米国の国益そのものに立脚した国家対国家の関係として持続性をもつ可能性は高くないと思われる。プーチンはこの点を良く理解しており、米国による宥和的姿勢はうまく利用しながら、同時に米国に対する対抗措置はぬかりなく採っている。
今日、米欧関係は政治・経済・安全保障の各般において緊張と不安定の傾向を増しており、ウクライナ問題を巡る緊張はその一端に過ぎない。この問題に限って言えば、日本は対ウクライナ外交の軸を欧州との協力におくことが賢明であり、そのことのみによってわが国の対米関係が毀損することを懸念するには及ばないだろう。
4 欧州との関係における戦略的自立
日本と欧州はユーラシア大陸の両端に位置している。歴史的にみると、中国やロシアなどのユーラシアに位置する国家の行動が破壊的、威圧的になるとき、国際関係は激しく変動してきた。今日でも、この地政学的現実は変わらない。
中露が力による現状変更を試みる中で今日、米国は変化しつつあり、米国と欧州諸国の世界観の間には乖離が生まれている。ウクライナ戦争やグリーンランド問題を契機に大西洋同盟の亀裂が鮮明になっている。
既述のとおり、わが国が直面する戦略環境の中でわが国が安定と繁栄を維持するためには、米国との協力関係に代わる選択肢はない。2010年代の終わり頃から、欧州は特に中国に対する警戒感を高め、伝統的にアジアに関心を示してきた英国やフランスだけでなく、スペイン、ドイツなど他の欧州諸国も軍事アセットを派遣するなどの形でこの地域への関心を高めている。
ただし、欧州にとっての安全保障上の最大の関心は依然としてロシアであり、中国についてはなお隙さえあれば政治的・経済的な利益をもたらしうる存在として見られている。最近の欧州主要国首脳の中国詣でも、まさに対中接近に利ありとみればこれを行うことをためらわない機会主義的発想を示すものである。
しかしながら、米中ロ三国が覇権主義を強めている中で、欧州は日本にとって価値観を共有する数少ないパートナーであり、「欧州とインド太平洋の安全保障の不可分性」というテーゼの持つ意味が一層重要になっている。わが国としてはそのような観点から、政治対話を深め、安全保障面を含む協力と連携の関係をより強固なものにするためのイニシアティブをとっていくこと、これが戦略的自立の発想に基づく対欧外交の基本である。
1987年の中距離核戦力全廃条約は、当初欧州正面における中距離核戦力撤廃のみが想定されていたが、当時の中曽根総理がグローバル・ゼロを訴えて米欧を説得し、最終的に欧州で廃棄されたミサイルがアジアに移転される事態を防ぐことができた。これが対欧米関係における戦略的自立の一つの姿である。[12]
また経済関係においても、CPTPPとEUとのリンク、防衛装備品の共同開発、サプライ・チェーンの強靭化、希少鉱物資源の安定的な確保、中国の不公正な貿易慣行の是正など日本と欧州が共同して取り組む分野は多い。
5 インド太平洋地域のミドルパワー(中堅国)との関係
オーストラリアは日本の「戦略的自立」戦略の最も有力なパートナーの一つである。日本とオーストラリアとの間では、貿易と投資、安保、技術、資源など多分野での連携と協力が進展している。日豪二国間の協力をさらに進展させると同時に、今後重要性を増すのは、日豪とインド太平洋諸国との間のミニラテラルな協力であろう。
オーストラリアは、原子力潜水艦の導入や最先端軍事技術の開発協力を進める米英豪三国間のAUKUS合意を結び、インド太平洋の抑止力と対処力に大きな役割を果たそうとしている。オーストラリアはインドネシアとの間で新しい安保協定に合意し、マレーシアとシンガポールとの間で結んでいる五か国防衛取り決めを活性化し、フィリピンとの関係を包括的戦略的パートナーシップに格上げして、同国の海洋安保能力の強化に関与している。オーストラリアはまた、パプア・ニューギニアやナウルなどの南太平洋島嶼国との間で安保条約を締結し、これらの諸国が敵性国家の政治的・軍事的圧力に対処できるようこれらの諸国の防衛により深く関与しようとしている。[13][14][15]
インドは、「戦略的自立」と「多国間連携」を対外関係の基本原則とするグローバルサウスの指導的国家の一つである。ジャイシャンカー外務大臣によれば、「北と南の双方に立脚するパワー(South-Western Power)」である。インドが悲願とする経済発展には、日米欧などの先進諸国との協力が不可欠である。インドは「非西側・非欧米」ではあるが、「反西側・反欧米」ではない。インドは先進諸国とグローバル・サウスをつなぐ国家として、その役割はさらに大きくなろう。[16]
インドネシアは太平洋とインド洋を結ぶ戦略的海域に位置し、世界最大のイスラム人口を擁する。伝統的に非同盟主義のもとで、「自由で能動的な」対外関係を推進するインドネシアは日米欧、中ロ、グローバル・サウス、イスラム、東南アジア、インド太平洋の諸国と緊密な関係を維持する稀有な国の一つである。
わが国は、以上三か国、及びその他地域諸国と歴史的に緊密な関係を築いてきている。わが国としてはその基礎の上にたち、「自由で開かれたインド太平洋」の実現の一環として、この地域のミドル・パワーの協力関係を強化するべきである。特にインド洋から南シナ海、東シナ海へと向かう海上航行路の安全を維持する上でも、豪州と共に、インドとインドネシア、さらにはフィリピン、ヴィエトナムを含めた6か国の対話と協力の体制を育てていくことは、グローバル・サウス全体を視野にいれたわが国の戦略的自立外交の基盤を固める上でも極めて重要である。
これまで我が国の政策研究大学院大学が築き上げてきた日・印・インドネシア3か国の1.5対話、さらにはインドネシアが提唱したAOIP構想は上記6か国メカニズムにより支えられることが望まれる。[17]
(2)韓国との関係
韓国も変化しつつある。米韓同盟の「現代化(modernization)」が合意され、米国はこのイニシアティブの下で、朝鮮半島の通常戦力での抑止と対処は韓国に委ね、在韓米軍はこれまでの北朝鮮への抑止を重点においた役割から、その「戦略的柔軟性(strategic flexibility)」を高め、広くインド太平洋の安定に寄与できる態勢を整えようとしている。
米韓首脳会議(2025年11月)での韓国の原子力潜水艦開発への米国の支持は、韓国が朝鮮半島を超えて、広くインド太平洋の力の均衡と抑止力・対処力の強化に寄与することへの米国の期待を反映しているといえよう。
ただし、米国の期待に対する韓国の意見は多様で、「同盟の現代化」が米国が望むような形で実行されるかまだ判然としない。韓国には米国の期待への抵抗も、また対中関係への影響を懸念する声もある。また、韓国の中で、インド太平洋の平和と安定が朝鮮半島の平和と安定に資するという認識、そして国力をつけた韓国が朝鮮半島を超えて、広くインド太平洋の平和と安定により大きな役割を担う必要があるとの認識が超党派で生まれつつあることは確かだが、その行方はなお不透明である。
わが国としてはこれらに留意した上で、戦略的に重要な東アジア諸国とミニラテラルな協力関係の構築を目指すべきであろう。
6 グローバル・サウスの国々との関係における戦略的自立
長きに渡って途上国の開発問題に取り組み、多国間主義や法の支配の原則を重視してきた日本に対する国際社会の評価は高い。就中、日本が開発に深く関与してきた東南アジアでの日本への信頼度は総じて高い。
国際関係におけるグローバル・サウス諸国の存在感が高まっていると言われる中にあって、東南アジア、中東諸国等における信頼を中核とするわが国のソフトパワーは、わが国の有する「戦略的不可欠性」のひとつである。わが国としてはその基盤の上に立って、グローバル・サウスの諸国との間に多角的な協力関係を築くことが重要である。
なお、グローバル・サウスとは、植民地支配を受けた歴史や開発のレベルなどを共有する国々に対し、明確な定義なく用いられる分類上の概念であって、国際社会の独立したプレイヤーとしての組織的実体がある訳ではない。これがひとつの独立した勢力であるかの印象を与えているのは、インド、ブラジル、中国、インドネシア等の有力な国々が自身の国際社会における地位を高める梃の一つとして作り出してきたものである。
(1)東南アジアとの関係:「新東南アジア・ドクトリン」の必要性
東南アジアはわが国が推進する「自由で開かれたインド太平洋」を構築する上で最も重要な地域の一つである。かつて貧困と政治的不安に苦しんできた東南アジアには今日、国作りの困難を乗り越え、豊かで世界に開かれた国家群が生まれている。東南アジア10カ国の合計のGDPは、すでに日本のそれを超えている。シンガポールは世界で最高レベルの個人所得の国になり、インドネシアやマレーシア、ベトナムなどは数十年以内に先進国レベルの所得の国になる国家目標を掲げている。[18]
そのような中でわが国は、東南アジアを取り巻く状況の変化を踏まえて、日本が目標とする「自由で開かれたインド太平洋」を東南アジア諸国と共に作り上げることを目指す、「新東南アジア・ドクトリン」を策定・宣揚すべきである。
1977年の「福田ドクトリン」は統一ベトナムの発足などによりアジア情勢が激変し、地域情勢の不透明感が増す中で、日本がASEAN諸国と共に新しい東南アジア作りに「心と心の通い合った」「対等のパートナー」として取り組むことを宣言した、東南アジア諸国の琴線に触れる画期的なもので、その後の日本=ASEAN関係を支える政治的基盤となり、両者の関係の発展に大きな貢献をした。[19]
いま、東南アジアを取り巻く環境は再び激しく変動している。インド太平洋の重要な通商路が通り、経済成長の大きな潜在力を有する東南アジアは、大国の抗争の場でもある。当時と比べて日本の国力は相対的に低下しているが、それでも日本は東南アジアで最も信頼された国家である。東南アジアの有識者の世論調査では、日本への信頼度は高い。
東南アジア諸国がわが国に最も期待するのは、日ASEAN間の友好協力をうたう美しい言葉ではなく、わが国が現下の地域や国際情勢をどう認識し、トランプの米国や習近平の中国、あるいは米中関係についてどのように見て、どう対応しようとしているのか、またその中でASEANとの関係をどう進めてゆこうとしているのかなどを率直に表明する戦略論であろう。
ところが、世界の多くの諸国がインド太平洋に関する包括的な戦略文書を公表しているが、「自由で開かれたインド太平洋」構想のイニシエーターを自負する日本は、いまだそうした戦略文書を発表していない。国際関係が激動するいま、日本はそうした戦略文書を策定し、その中にASEANとの関係を位置づけるべきだろう。
特にASEAN諸国地域が今や諸大国の勢力争いの対象地域になりつつあり、ASEANの力の源泉の一つである「一体性」も脆弱化しつつあることに充分留意し、日本としてはASEANの一体性と結束を支援する政策を推進することが重要である。また、グローバル・サウスの他の地域の発展のために日本とASEANが協力して取り組みこともこれからの日・ASEAN関係の一つの柱となることが望まれる。
このような日本のASEAN政策はASEAN諸国に対する安全保障上の協力強化と相まって、日本の戦略的自立性を高めるものとなろう。
(2)中東の国際関係への新たな取り組み
アジア・アフリカ・欧州に接する中東地域は、世界貿易の12%、海底ケーブルの17%が通過しグローバル・サプライチェーンの要衝である紅海・スエズ運河を擁し、「自由で開かれたインド太平洋」の一翼をなす重要な地域である。
ガザ戦争は、パレスチナ問題の解決なくして中東地域の持続的な安定が望めないことを再認識させた。日本は、これまでも、オスロ合意に先立ってアラファトPLO議長を日本に招致し、パレスチナ経済支援のために東南アジア諸国の国つくりの経験と知見を糾合しパレスチナと共有するための「東アジア諸国協力会議(CEAPAD)」を創設し、また、自立可能なパレスチナ経済のモデルとして「ジェリコ農産加工団地」を立ち上げる等、日本独自の様々なイニシアチブを繰り出してきた。[20]
パレスチナ問題は世界のムスリム教徒にとっては心の琴線に触れる問題である。世界人口のおよそ4分の1がムスリム教徒、アジアのムスリム教徒人口は10億から13億、インドネシア人口2.8億人のうち87パーセントがムスリム教徒であることを忘れてはならない。それほど巨大な問題なのである。[21]
パレスチナ問題で日本が政治的な役割を果たすことは容易ではない。端的に言ってイスラエルの実質的なパートナーはアメリカだけである。そうであっても日本がパレスチナの友人であり、パレスチナ問題の解決に貢献できることを示すことはできるはずだ。例えば、日本がインドネシアと共にその創設に尽力した「パレスチナの発展のための東アジア会議」を拡大強化して「パレスチナ復興・発展のための国際会議」とすることを日本とインドネシアが提唱することは日本のASEAN及びグローバル・サウスとの関係強化に寄与するであろう。
(3)ベンガル湾を囲む新たな経済圏の形成
わが国はこの地域で新たな地域経済圏の発展に尽力すべきである。注目すべきは東南アジアと南アジアを結ぶベンガル湾である。巨大経済圏に成長する潜在力を擁する同地域は、21世紀のインド太平洋の経済と安全保障の動向に大きな影響を及ぼす可能性を秘めている。
この地域はかつて緊密な相互依存関係で結ばれた一大経済圏を構成していたが、植民地化と第二次大戦後の脱植民地化の過程で東南アジアと南アジアに分裂することになった。近年、この地域の経済統合の動きが始まっている。日本には、バングラデシュの開発に深くかかわってきた歴史がある。また近年日本は、同国やインド東北部の開発、インド、ミャンマー、タイを結ぶ経済連携を推進する活動に関わってきたが、この地域の戦略的・経済的な重要性を踏まえて、ベンガル湾の国際政治経済への一層の関与が求められる。
(4)南アジア・南太平洋の島嶼国家との関係
通商国家日本にとって、海洋の安全保障、特に西太平洋からインド洋の海洋安保は死活的に重要である。海洋安保は連結性の確保が鍵であり、一部にでも連結性に欠落が生じると全体の安全保障が失われかねない。南アジアや南太平洋には、スリランカ、モルジブ、ソロモン諸島、パラオ、ミクロネシア連邦、キリバスなど、通商路の戦略的要衝に位置する島嶼国家が数多く存在する。これらの諸国は経済的に脆弱な国が多く、経済的な誘因や圧迫に脆弱である。また海上保安能力など国家の統治能力も不十分である。日本はインドやオーストラリアなどと共に、これらの島嶼国のガバナンスの強化に積極的に取り組むべきである。
<参考文献>
[1] G・ジョン・アイケンベリー『民主主義のための安全な世界――リベラル国際主義とグローバル秩序の危機』(イェール大学出版、2020年);チャールズ・クップチャン『孤立主義――米国が世界を遮断しようとした歴史』(オックスフォード大学出版、2020年)。
[2] フレデリック・メラン「欧州のための戦略的自立」(オリヴィエ・シュミット編『欧州の安全保障』ラウトレッジ、2022年、所収);バリー・ポーゼン『軍事ドクトリンの起源』(コーネル大学出版、1984年)。
[3] C・ラジャ・モハン『ルビコン川を渡る』(パルグレイブ・マクミラン、2003年);シヴシャンカール・メノン『選択――インド外交政策の内側』(ブルッキングス研究所出版、2016年)。
[4] フィリップ・ゴードン『フランスのある種の理念――フランスの安全保障政策とゴーリスト的遺産』(プリンストン大学出版、1993年)。なお、フランスは2009年にNATO統合軍事機構へ復帰した。
[5] EUの「開かれた戦略的自立」概念は2016年のEUグローバル戦略で提唱され、その後の各種文書で精緻化された。欧州委員会「戦略的展望報告書2023年」COM(2023) 376 final(ブリュッセル、2023年)。
[6] ヘンリー・ファレル、エイブラハム・ニューマン「武器化された相互依存――グローバルな経済ネットワークはいかに国家の強制力を形成するか」『インターナショナル・セキュリティ』第44巻第1号(2019年夏)、42〜79頁。
[7] 「自立したインド(Atmanirbhar Bharat)」構想は2020年5月12日、ナレンドラ・モディ首相が約20兆ルピーの財政措置とともに発表した(インド政府財務省『アトマニルバール・バーラト・アビヤン』〔ニューデリー、2020年〕)。
[8] 日本企業の半導体製造装置世界市場占有率はおよそ30〜33%。信越化学とSUMCOの2社で世界のシリコンウエハー市場の約60%を占める(米半導体工業会〔SIA〕『2023年米国半導体産業の現状』〔ワシントンD.C.、2023年〕)。
[9] イスラエルは2007年9月6日、シリアのアル・キバル核施設を攻撃した。IAEAはその後、同施設が申告されるべき原子炉であったと結論付けた(IAEA理事会GOV/2011/30〔2011年5月24日〕)。
[10] スクアッド(日米豪比の枠組み)は、2024年8月に初めて開催された4カ国防衛・外相会議において発足し、フィリピンの海洋状況把握能力及び海上保安能力の強化を目的とする。
[11] 日米豪印4カ国による安全保障対話(クアッド)は2017年に高官レベルで再活性化され、2021年3月以降は首脳会合が開催されている(ホワイトハウス「クアッド首脳会合ファクトシート」〔2021年9月24日〕)。
[12] INF(中距離核戦力全廃)条約は1987年12月8日に署名(米国は2019年脱退)。グローバル・ゼロを求めた中曽根康弘首相の働きかけについては、中曽根康弘『新しい日本をつくる』(カーゾン・プレス、1999年)。
[13] 五カ国防衛取り決め(FPDA)は1971年、オーストラリア、マレーシア、ニュージーランド、シンガポール、英国の5カ国により発足した。
[14] AUKUSパートナーシップは2021年9月15日、オーストラリア、英国、米国により発表された。その中核は、オーストラリアによる通常兵装の原子力潜水艦の取得である(ホワイトハウス「AUKUSに関する首脳共同声明」〔2021年9月15日〕)。
[15] AUKUS合意(2021年9月15日)は「柱Ⅰ」(原子力潜水艦)と「柱Ⅱ」(先端能力協力)の双方を包含する(ホワイトハウス「AUKUSに関する首脳共同声明」)。
[16] S・ジャイシャンカール『インドの道――不確実な世界のための戦略』(ハーパーコリンズ・インディア、2020年)、5〜19頁。
[17] 「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」は2019年6月23日、バンコクで開催された第34回ASEAN首脳会議で採択された。
[18] ASEAN10カ国の名目GDPの合計は2023年に日本を超えた(ASEANデータブック2023〔ジャカルタ、2023年〕;IMF世界経済見通しデータベース〔2024年10月版〕)。
[19] 「福田ドクトリン」は1977年8月18日、マニラにおいて福田赳夫首相が表明した(須藤季夫『福田ドクトリンとASEAN』〔東南アジア研究所、1992年〕)。
[20] CEAPADは日本の主導により2013年2月に設立された。2006年から開発が進められているジェリコ農産加工団地は、持続可能なパレスチナ経済構築に対する日本の主要な貢献である。
[21] アジア太平洋地域のムスリム人口は約11億人と推計される。インドネシアは世界最大のイスラム系多数派国家である(ピュー・リサーチ・センター「世界のムスリム人口の将来」〔ワシントンD.C.、2011年〕)。
このペーパーは、外交安全保障研究フォーラムの以下のメンバーが、個人の資格において参加した検討会の内容を倉井高志元駐ウクライナ大使及び菊池努青山学院大学名誉教授が取りまとめたものであり、全てのメンバーがその内容全てに同意しているものではありません。
文責はフォーラムの飯村豊代表及び橘優共同代表にあります。
代表 飯村豊 元駐仏大使
共同代表 橘優 元朝日新聞政治部長
シニア・フェロー
倉井高志 元駐ウクライナ大使
菊池努 青山学院大学名誉教授
岡浩 前駐エジプト大使
竹中千春 元立教大学教授
駒木明義 朝日新聞論説委員
渡辺正人 政策研究大学院大学特任教授
篠田邦彦 同大学教授
福澤真由美 日本テレビ報道局統括デスク